解説付 臨床工学技士国家試験 第36回 午後:第89問

血液と医用材料が接触したとき、最初に起こるのはどれか。

1: タンパク質吸着

2: 線溶系亢進

3: 赤血球凝集

4: 血小板粘着

5: 石灰化

生体組織が異物と接触したとき、異物認識、免疫反応、生体内取り込みといった各種の生体反応が、異物と生体組織の界面を中心として繰り広げられていくことから、材料の生体適合性を考える上で、材料と生体組織間の界面現象が重要な要素となってくる。医用材料と血液が接触した場合、以下の現象が起こる。
・血栓形成
・血液凝固
・血小板活性化
・補体活性化
・溶血
医用材料と血液が接触して、血栓形成にいたる過程での最初の重要な段階は血漿タンパク質の吸着と変性である。血漿タンパク質に含まれる多くのタンパク質の中で、アルブミン、γ-グロブリン、フィブリノーゲンの3種類のタンパク質が大部分を占める。
その他に溶血もある。機械的因子に起因する溶血は、主に血流速度や乱流のような物理的因子により引き起こされる。血流自体も赤血球を変形させ赤血球膜を破壊させるリスク因子であるが、医療機器側の複雑な形状が関与することで重度の溶血を引き起こす可能性がある。
補体活性化の経路として、3 種類(古典経路、第二経路、レクチン経路)が知られており、いずれの経路も C3 が C3a と C3b に分解される。

1:正解。医用材料と血液が接触すると、まず血漿タンパク質が材料表面への吸着が起こる。

2:線溶系とは、フィブリンを適切に分解することにより止血を維持しながら臓器虚血を防ぎ、創傷治癒に繋げる生体防御機構のひとつである。線溶系亢進の状態は、フィブリノーゲンが直接分解されたり、フィブリン血栓が止血機能を果たすことなく分解され、出血性病態となる。

3:赤血球凝集とは、赤血球が抗体、レクチン、ウイルスなどによって凝集する反応をいう。血液型判定のように、直接血球を凝集させる場合(直接凝集反応)と、可溶化抗原を血球表面に吸着させて反応を行なう場合(間接血球凝集反応)がある。多くのウイルスは、粒子の膜表面に赤血球凝集素として糖蛋白をもっており、この特性を利用してウイルスの簡便な定性定量を行なうことができる。その他に寒冷凝集素の存在が原因となり、赤血球が集塊を形成する現象(寒冷凝集素症(CAD))を引き起こすこともある。

4:医用材料に吸着したタンパク質を介して、血小板が医用材料に接着する。

5:リン酸カルシウムなどの無機物が沈着し固くなる慢性局所反応であり、生体側にも医用材料側にも起こる。

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臨床工学技士 国家試験 過去問
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